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  • 行政書士法改正説明1 注意喚起 技能実習制度・特定技能制度と行政書士法違反について 

     最近、少子高齢化による人手不足の影響から、外国人労働者特に外国人技能実習制度や特定技能制度が注目されています。

     従来、外国人技能実習制度は事業協同組合が、特定技能制度は登録支援機関となった事業協同組合や人材派遣会社などが中心になって行われてきましたが、実はこれらの事業協同組合や登録支援機関のほとんどが行政書士法・弁護士法違反をしているという事実を御存じでしょうか?

    今回は、行政書士法・弁護士法と入管業務について、行政書士法を中心に説明していきたいと思います。特に令和7年5月30日にこの問題を是正するために行政書士法の改正がなされましたから、これから外国人を雇用しようとする方、すでに雇用している方、、非行政書士の登録支援機関の方にとっては大変重要な説明になります。

    1 行政書士法について

    行政書士法に以下のような規定があります。

    第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。

    第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。

     この条文の意味することは、行政書士と弁護士だけが他人からの依頼を受けて報酬をもらって官公署に提出する書類を作成することができるということです。官公署には出入国在留管理庁も含みますので、入管に提出する書類は行政書士と弁護士だけが報酬を得て作成できるということです。逆に言えば、行政書士・弁護士資格を持たない事業協同組合や登録支援機関は、入管に提出する書類を外国人や受け入れ企業に代わって作成をし、入管に提出することは違法だということです。

     このことは出入国在留管理局も理解しており、例えば「特定技能1号」に係る提出書類一覧表にも注意事項として記載されています(中央赤色部分)。官公庁に提出する書類というのは、例えば入管に提出する書類でいえば、申請書、支援計画書等一切の書類を言います。特定技能の支援機関の場合、四半期に一度定時報告書を入管に提出しなければなりませんが、これも官公庁に提出する書類に含まれます。すなわち、行政書士・弁護士でなければ、一切の書類の作成ができないのです。

     2 行政書士法違反について

    ちなみに、行政書士法違反の罰則は1年以下の懲役または100万円以下の罰金です(行政書士法第21条第2号)。そして、行政書士法違反で有罪となれば、関係諸法令違反ということになるので、当然行政処分、受け入れ停止命令の対象となりますので、登録支援機関や技能実習の監理団体としての業務はできなくなります。

     特定技能の登録支援機関を選定する場合は、上記のことを踏まえて慎重に行ってください。

     

     

     


  • 入管法改正について

    令和6年6月14日に入管法が改正されることが決まりました。各種報道の通り、今回の改正のポイントは、技能実習制度に代わる就労育成制度の創設と、永住権の許可要件の明確化及び取り消しです。

    そこで、なぜこのような改正がなされるのか解説しようと思います。

    1 技能実習制度の廃止と就労育成制度の創設

     (1)そもそも技能実習制度は、発展途上国への技術移転を目的に始まりました。私の知る限りでは、田中角栄が総理大臣だったころに冷戦下で国交のなかった中華人民共和国との間で日中国交正常化がなされましたが、この時に中国から日本の製鉄技術を学ぶために複数の技術者が日本に留学しました。この時の技術者には残留孤児が含まれていて実親と涙の再会を果たし、のちに山崎豊子が「大地の子」として小説にし、ドラマ化されたりもしています。この技術者達は中国に帰国後宝山製鉄を上海に作り、中国の経済発展の基礎となるのですが、この技術者達の存在が技能実習制度の原型になっています。制度ができてからすでに40年近くたっていますが、その間様々な国から技能実習生が来日し日本人とともに働きながら技能を習得し母国の経済発展に寄与しています。

    このようにもともとの技能実習の目的は技術移転だったわけですが、近年では日本も少子高齢化で若年層の労働者不足となっており、本来の目的とは離れて人手不足の解消手段として活用されているのが現実であり、運用が本来の目的とは大きくかけ離れていました。さらに特定技能制度が創設され、特定技能はその目的として人手不足の解消をうたい、技能実習生から特定技能労働者へと移行する外国人も増えてきたところから、理想と現実の乖離にさらに拍車をかけていたわけです。

    このような技能実習制度の理想と実態との齟齬の埋めるために今回法改正がなされることになりました。

     (2) では、就労育成制度とはどのような制度になるのでしょうか?まだ制度についての細かい説明が政府からなされていませんので、正直よくわかりません。以前入管の職員にも聞いたのですが、法改正がなされても制度の細かいの変更点については施行日の2週間くらい前にならないとわからないそうです。入管の職員でさえそうなので我々がわかるはずがありません。ということで推定するしかないのですが、おそらく制度の実質的な内容についてはほとんど変わらないのではないかと考えています。報道では、転籍を一部認めるとか、外部監査人を置くようにするとか言われていましたが、転籍は自由に認めると、都会に外国人が集まりすぎる問題が出てきますし、外部監査人は従来から必要でした。というわけで用語の使い方が変わるくらいで大幅な変更点はないのではないかと思います。今後改正情報がでたら、また解説します。

    (3)就労育成制度のメリット

    特定技能制度ができたことから、就労育成制度は不要にも思えますが、外国人にとって働きながら特定技能へ移行する資格をもらえるというメリットもあります。

    特定技能労働者になるためには、試験に合格するか、就労育成制度を経るかの2通りの方法があります。試験は主に留学生が受け、留学生ではない外国人は就労育成制度を利用して来日するということになると思います。

    2 永住権の許可要件の明確化と取り消し

     (1)従来から永住権は認められてきましたが、基準があいまいでした。今回改正により明確にするようです。

    出入国在留管理庁 永住許可のガイドラインより



    1)素行が善良であること

    法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。

    (2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること

    日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。

    (3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められること

    ア 原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。

    イ 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。

    ウ 現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。

    エ 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。

    という基準は公表されてきたのですが、納税義務や素行要件など、運用によって基準があいまいだった時期が長く、外国人からも厳しくなったというような意見を聞いたりします。今回改正によりこれらを法令に明記し明確にするようです。

    (2)永住許可の取り消し

    永住権は他の在留資格と異なり更新制度がありません。従来はですので5年に1回在留カードの書き換えをすれば永久に永住者としての地位を失うことはありませんでした。

    しかしながら永住権は外国人が日本に永住するすなわち居住する意思があるからこれを認めるという許可なのですが、残念ながら永住権を取得したら出国したまま日本に戻らない外国人も多数います。これでは居住しているとは言えないので、このような制度の趣旨を逸脱した外国人については、永住許可を取り消すことを認めるという改正です。

    税や社会保障費を支払わなければ直ちに永住資格を失うというわけではないことに注意が必要です。


  • 建設業法施行規則改正①

    令和2年10月1日より改正建設業法施行規則が施行されました。主な改正点は以下のとおりです。

    一 主な改正の概要と審査

    1 経営業務管理責任の基準

    従来は、許可を受けようとする業種についての5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を持った人が常勤役員等のうち1人は必ず必要でした。

    改正建設業法施行規則では、以下のように改められました。

    (1)5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する常勤役員が最低1人いれば経営管理責任者の基準を満たすことは当然ですが、経営業務の経験について、経営経験許可業種ごとの区分を廃止し、全許可業種の経験として統一することになりました。

      例えば、建築一式の許可を取得しようとした場合、従来であれば建築一式の経営管理の経験が5年以上なければなりませんでした。したがって、1年につき1通づつの建築一式の契約書等を揃えて立証する必要がありました。

      改正後は、建築一式の経営管理の経験がなくとも建設業全般についての5年以上の経験があれば良いことになります。したがって、(土)、(と)、(電)等の契約書でも1年に付き1通ずつ契約書を揃えれば良いことになります。

    (2)法人などの組織の場合、経営業務管理責任者が存在しなくても、「組織」で適切な経営業務管理体制になっていれば許可の要件を満たすことなりました。すなわち、「常勤役員等」と「常勤役員等を直接補佐する者」の組み合わせによって許可が認められます。

    ① 「常勤役員等」

    建設業経営経験2年以上を含む、5年以上の「建設業のの役員等または役員等に次ぐ地位」を有する者、または、建設業経営経験2年以上を含む、5年以上の「建設業以外での役員等の経験」を有すも者であれば、「常勤役員等」の基準を満たします。

    ② 「常勤役員等を直接補佐する者」

    許可を取ろうとする会社で、「財務管理」「労務管理」「業務管理」の5年以上の業務経験がある者であれば、基準を満たします。